放課後。

「…帰ろう。」

愛那がいない限り、1人で帰るしかない。

1人が

こんなにも

寂しかったなんて。

「ーっ。あい、な…っ」

私は、その場に座って泣いた。
誰もいない教室は、いつもより怖く見えた。

「…莉亜?」

誰かが私の名前を呼んだ。

「ひ…っ、だ、れっ…?」

「…何で、泣いてるの?」

声の主は海斗さんだった。

「…っ、かいと、さんっ…ぅっ…」

「ねぇ、どうしたの?言ってくんないと分かんないじゃん。」

「…言いませんっ‼︎…っ」

「…へぇ〜?じゃ、無理矢理にでも言わせちゃおうかな。」

…?

どんっ‼︎

いきなり壁に叩きつけられた。

目を開けると、海斗さんの顔が真正面にあった。

「〜っ⁉︎」

「莉亜?言って。」

「い、やです‼︎」

「…」

すると、海斗さんの顔がどんどん近付いてきた。

…⁉︎

「〜っ‼︎かいとさ、やめてくださいっ‼︎」

もごっ

ー⁉︎
突然海斗さんに口を押さえられた。

「何言ってんの。恋教えて欲しいんでしょ?」

海斗さんから、恐怖を感じた。

まるで、悪魔のようなー


「こ、これが…?」

「…どうだろうね?」

ニヤッと笑って、じりじりと近づいてくる海斗さん。

「…ひ、っ。こ、来ないでくださいっ‼︎」

「…ふぅん。」

…え

怒らせちゃったのかな。

どうしよう。

「す、すみませ…」

「じゃあさ、」

その”海斗さん"って呼び方やめて?


「…えっ⁉︎じゃあ、何て呼べばいいんですか?」

「じゃ、」

海斗

「…っいきなり呼び捨てだなんて…むむむ、無理ですよっ‼︎」

「…じゃあ、昨日の契約無しってことで。」

「え…それは、」

「嫌なら僕の言うとおりにしてね?」

「…うぅ、はい…。」

「良い子だね。試しに海斗って呼んでみて?」

「〜っ…か、かいとっ…‼︎」

ぶわっと顔が熱くなっていくのが分かった。
今、私どんな顔してるんだろ…。

海斗さん…海斗の方に目をやると、

海斗の顔が赤くなっていた。

「ーっ…‼︎」

「海斗…?ど、どうしたんですか?」

「…っ、何でもない。あと、敬語なし。いいね?」

「う…、分かりま…分かった。」

「…帰ろっか。莉亜。」

「…う、うん。」

校舎から出ると、雨が降っていた。

「…どうしよう。傘、持ってないよ…。」

「僕、持ってるよ?」

「あ…入れて‼︎」

「だーめ。」

「えぇ…意地悪っ‼︎」

「入りたいんなら、キスしてもらおうかな。」

「〜ふぇ⁉︎⁉︎⁉︎」

き、き、き、き、

キス

ですか…⁉︎

「や、やだっ。ばかっ‼︎」

「ふぅーん?そんな口の利き方して良いんだ?」

「…分かった。き、キスするもんっ‼︎」

覚悟を決めてそう言った瞬間、海斗の顔が私の顔に近づいてきた。

「〜っ⁉︎かい…」

海斗は、私の頬に優しくキスをした。

「莉亜のほっぺ、頂きましたーっ‼︎」

「む、むぅっ‼︎」

「怒った顔も可愛いね。」

「〜⁉︎」

不意打ちをくらいました。

「いいよ。わがまま聞いてくれたから、許してあげるよ。ほら、入って?」

「…うん。」

私達は家まで相合傘で帰った。


「あ、私ここだから‼︎もう大丈夫‼︎ありがとう。」

「分かった。またね。」

家に入ると、お母さんが猛スピードでこちらに走ってきた。

「ねぇ、莉亜。あの人誰?もしかして…かれs」

「もうっ。そんなんじゃないし‼︎お母さんのバカ‼︎…ただの、友達…だもん。」

「その言い方…好きなの⁉︎」

「だから違うってば‼︎」

私は自分の部屋に行って、ベッドに寝転んだ。

『好きなの⁉︎』

「好きな訳ないじゃん。」

『好きなの⁉︎』

「そんな、こと…」

分かんないよ…。


だって、


誰かを好きになったことなんてないんだから。