『…あのさ、姫奈』『姫奈ちゃん、あのね…』

神妙な面持ちで、そう切り出した2人。

けど、今は。

「なぁ、姫奈!せっかくだしなんか甘いの買って帰ろうぜ」

「いいじゃん。僕、アイスがいいな」

と嘘のように笑顔で、私はなんだか拍子抜けしてしまう。

…ま、いっか。
2人とも、さっきまでの話、すっかり忘れちゃってるみたいだし、私がわざわざ掘り返すことじゃないよね。

1人でそんな結論にいたり、私は彼らに向かってニコッと笑顔を向けた。

「うん、そうだね!よし。じゃあ、さっきのお礼に好きなアイス1つずつ私が奢ってあげる」

「へぇ〜…。姫奈言ったな。よし、じゃ、俺1番高いアイスにしよ」

「ハァ…。密、大人げないこと言うなよ…」

ケラケラと楽しそうに笑うひーちゃんと、そんなひーちゃんに呆れたような視線を送るすーちゃん。

そんな彼らが微笑ましくて私もクスッと笑みをこぼす。

私が高校生になってから、なかなか2人に会うこともなく疎遠になっていた。

だから、昨日久しぶりに家の前で会ったの実はちょっと嬉しかったんだよね。
まぁ、鉢合わせたタイミング的には最悪だったけど…。

ショッピングモールを出て、家まで続く帰り道を3人で並んで歩く。
いつの間にか、私の右隣はひーちゃん、左隣にはすーちゃんが陣取っていた。

そういえば、小さい頃は、2人の間を歩くのが私の定位置だったことを思い出す。

『姫奈は、俺の隣!』 『だめ!僕の隣歩くの!』

そんな可愛いやり取りをしていたのは2人が何歳の頃だったかな?

昔は私よりずっと小さかった身長も、今では見上げるくらい大きくなっていて不意に寂しさを感じた。
 
ひーちゃんも、すーちゃんもいつかは好きな子ができるだろうし、こんな風に気軽に遊べなくなっちゃうよね。

チクン。

なぜかチクッと、胸に感じた鈍い痛み。

…??

その時の私は、一瞬感じたその痛みの理由がわからず、小さく首をひねることしかできなかったーー…。


ちなみに…。

「よっし…!俺、このアイスにする」

「え〜…。じゃあ、僕も」

「……」

こういう所は、あんまり変わってないのね…。

なんだかんだ言いつつ、ちゃっかり2人とも1番高いアイスを選んでいて私が思わず苦笑いを浮かべたのは言うまでもない…。