クリスマスを数日後に控え、二谷が気を利かせてリビングにクリスマスツリーをセッティングしてくれた。

結婚して三カ月が経ち、クリスマスという一大イベントが目前に迫っているのに、旦那さんである士門さんからはクリスマスの予定を聞かれたこともない。

三カ月経って、うすうす感じている。
彼がクリスマスに一緒に過ごしたい女性は、妻である私ではなく、あの人(木下さん)なのだと。

先日、夜遅くに帰宅した彼は珍しく酔っていて。
『お酒に強い』と聞いていたから、少し心配になったのだけれど。

そんな酔った彼をベッドに寝かせ、当たり前のようにジャケットを脱がせてネクタイを解き、介抱したのは彼女だった。

開け放たれたドアから一部始終を見てしまい、『私がやります』ということすら言えず、その場から逃げるように自室へと駆け込んだ。

本来なら『後は私がやりますから』と一言言えば済むのかもしれない。
けれど、形だけの妻に、口出しする権利はない。

結婚式の日に腕を組んで歩き、額に誓いのキスをされて、大勢の人の前で彼に腰や肩を抱かれた。
だけど、あの日が最後だ。

彼が私に触れたのは。


ラブラブな夫婦像を求めているわけじゃない。

リビングで顔を合わせたら挨拶をしたり、時間が合えば一緒に食卓を囲むくらい、例え形だけの夫婦であってもあるのだと思っていたから。

廊下ですれ違うこともなければ、休みの日に同じ空間で過ごすこともない。
本当に戸籍上だけの妻。

結婚する前と何一つ変わってない。
クリスマスも、こうして二谷と過ごすのだろう。

視界が滲んで、思わず目元を擦る。
泣いたってどうにもならないのに。

「痛っ…」
「どうされました?!」
「コンタクトが外れたみたい…」