そしてそこには、私が知らない蘇生法が乗っていた。

『止血が完了したら、顎を上げ、肺までの気道を確保する。
 唇を合わせ、息を吹き込む。
 その後、一分間につき百二十回を目安に、胸部の圧迫をする』


 その手順通りにジョーの顎を上げ、唇を重ねた。

 重ねたジョーの唇はまだほんのり温かく、ジョーが生き返る希望を持つ。それとともに、今まで過ごしたジョーとの甘い時間を思い出した。
 ジョーは私を抱きしめ、こうやってそっとキスをしてくれた。ジョーにキスされると、顔が真っ赤になって幸せで、この時間が永遠に続けばいいのにと思った。
 こんなに甘くて優しくて、その身を犠牲にしても私を守ってくれたジョーを、失いたくない。

 ジョーの唇に、そっと息を吹き入れた。私の息はジョーの体の中へ入り、微かに胸が膨らむ。
 そして私は、本に記載してある通り、ジョーの胸部を圧迫する。

 どうか……生きて!
 お願い、ジョー!!

 何度も何度も繰り返した。諦めそうになるが、少しでも可能性があるのなら、私は止めない!



 馬車が治療院の前に着く頃……もう無理なのかと思い始めたその時……
 ジョーがとうとう息を吹き返したのだ。

 苦しく咳き込んだジョーは、うっすら目を開けて私を見た。ぼんやりと焦点の合わない目だが、その目を見るとまた涙が溢れてきた。私は泣いてばかりの弱虫だ。だけど……少しだけ、ジョーの役に立てたかな。

 ジョーは泣いている私の頬に、そっと手を伸ばす。そして嬉しそうに目を細めた。