あ、あれ。海斗くん、何だかもうスッカリいつも通り?


さっきドキドキしていたのは、もしかして私だけだった?


唇には、まだわずかにキスの余韻があって。


先程まであんなにも彼と距離が近かったのに、今は遠くて。


離れていった海斗くんの腕が、温もりが、なんだか無性に恋しい。


海斗くん、もうキスはしてくれないのかな?


だってさっきのキス、すごく良かったから……って、何を考えてるの私!


これじゃあまるで……私が海斗くんのことを、意識してるみたいじゃない。


「……っ」


思い返してみれば、先程の海斗くんのあの少し強引なキスも全然嫌じゃなかったし。


最近は海斗くんの笑顔を見ると、ドキドキすることも増えていた気がする。


もしかして私、海斗くんのことを……?


「おい、希空。何やってるんだよ。テスト、まだ残ってるぞ?」


眉をひそめた海斗くんが、じっとこちらを見てくる。


海斗くんに見られてると思うと、また鼓動が速くなる。これってやっぱり……?


「テストちゃんと解かなきゃ、ご褒美は無しだからな?」

「わっ、分かってる!」


自分のなかでの違和感みたいなものを感じながら、私は海斗くんの向かいの席へと腰を下ろすのだった。