陸斗くんと初めて話した日のことは、今でも鮮明に覚えている。


あれは、今からちょうど1年前のこと。


高校に入学して間もないある日の放課後。


私は、担任の先生から授業で回収したクラスメイト全員分のノートを、教室から職員室まで運ぶようにと頼まれた。


「日直でもないのに、なんで私が……」


『小嶋お前、暇そうだから』って、先生ひどくない?!


そりゃあ今後部活に入る予定もないし、今日は学校が終わったら真っ直ぐ家に帰るだけだけど。

入学して早々に雑用を頼まれるなんて、ついてない。


「はぁ……」


クラスメイト40人分のノートを胸の前で抱えると、無意識にため息がこぼれた。


ていうかこれ、けっこう重い。


その上、何冊ものノートを胸の前で抱えていると目元が隠れてしまって足元がおぼつかない。


私は、足元に気をつけながらゆっくりと階段をおりていたのだが。


ズルッ。


「きゃっ」


ふとした瞬間に足が滑り、体が大きく後ろにのけぞった。


うそ。おっ、落ちる……!