「華、下川社長から連絡がきた」

それからしばらく経った頃、夕食の席で父さんが切り出した。

「今度、不動産関係の企業が集まる大きなパーティーがあるんだ。そこに出席して欲しいって。父さんも参加する集まりなんだ。一緒に行けるか?」

「それは構わないけど…。私が呼ばれたのはどうして?」

「うーん、恐らく常務の婚約者として紹介するのかもしれんな」

「ってことは、キモ…、下川常務もいらっしゃるってこと?」

「その点については何もお話されなかった。多分だけど、常務は行くのを渋っていて、当日ドタキャンされるかもしれないんじゃないかな?今までも何度か会議や集まりで、息子が急遽来れなくなって…って社長がおっしゃってたことがあったから」

「ふうん…。じゃあ、もし常務がいらしたら私を婚約者として紹介する。いらっしゃらなかったら、単に私は父さんのつき添いで来たことにする、みたいな感じかな?」

「ああ、そうだと思う。どうする?華」

「行くわ。でないとこの縁談、いつまで経っても進みそうにないもの。私、こういう中途半端な状態が一番嫌いなのよね」

「華…。なんか、結婚の話じゃないような口ぶりだけど…」

「するわよ?結婚。してみせますとも。見てらっしゃい、キモシ。受けて立ってやるわ!」

「華…、父さんもう…」

何も言えないらしかった。