そう思ってしまい、自己嫌悪に陥りそうだった。
 自分のことしか考えられなくて嫌気がさす。

 ポケットの上から鍵を握り締めた。
 早く見つけなきゃ。できることはそれしかない。

 どうにか自分自身を(ふる)い立たせる。

 スマホのバッテリーは54パーセント。
 そろそろチャイムが鳴る頃だ。

 ライトをつけ、廊下に出る。

 ──ジリリリリリリ!

 突如として鳴り響いた非常ベルの音に、びくりと肩が跳ねた。

「え……? なに?」

 昨晩はこんなことなかった。

 誰かが間違えて押してしまった、とか?
 下の方から聞こえる気がする。

 弾かれたように歩み出て、吹き抜けの手すりを掴んだ。

 身を乗り出してみると、人影が廊下を駆け抜けていった。

(誰……?)

 その後ろを、あの化け物が追っている。

 先ほど見たゾンビみたいな動きじゃない。
 すぅっと漂って流れるようで、恐らく床から浮いている。

 3階で夏樹くんを追ったあと、いつの間にか1階へワープしていたのだ。

「来るな!!」

 突然響いてきたその叫び声にはっとした。
 追われているのは朝陽くんだ。

 騒々(そうぞう)しい足音が続く。
 どうやら東階段の方を駆け上がっているらしい。

「朝陽く────」

 とっさにそちらへ向かいかけ、なけなしの理性が働いた。
 お陰でぴたりと足が止まる。

 行ったところで化け物と鉢合わせて殺されるだけだ。
 わたしに助けることなんてできない。

(でも、どうしよう……)

 分かっている。
 これはただの夢。

 実質、死んでも目覚めれば生き返っている。

 リミットがあるとしても、今夜の死はまだ引き金にはならない。
 本当の“死”へ直結することはない。

(だけど……)

 煮え切らないで足止めを食らっていると、ふいにスピーカーがノイズを発した。

 ──キーンコーンカーンコーン……

 不気味で耳障りなチャイムが鳴る。
 1時間が経過し、1階が崩落する合図。

 ──ゴォオオ!

「!」

 校舎が揺れ、轟音が鳴り響く。

 けたたましい非常ベルの音と合わさって、気が狂いそうになる。

 手すりを掴んで、踏みとどまるべく足に力を入れた。
 1階を見下ろしてみる。

「わ……」

 西側からものすごい速度で床が抜け、瓦礫(がれき)と化した校舎が深淵の闇に吸い込まれていく。

 何とも恐ろしい光景を目の当たりにし、目を見張って息をのんだ。

「花鈴!」