机の中に入っていたノートの奥に、きらりと光るものを見つけた。

 鍵だ。
 そう気がつくと、先ほどの恐怖も忘れて手を伸ばしていた。

 素早く取り出す。
 今度は手が現れることも掴まれることもなかった。

「……“図書室”」

 プレートの文字を読む。
 屋上のものではなかったけれど、十分な収穫だ。

 ──ぴちゃ……

 ──ズズズ……ズズ……

 ふとそんな音が聞こえ、はっと顔を上げる。

 椅子を倒した音やわたしの声を聞きつけ、あの化け物が寄ってきているのかもしれない。

 心臓が早鐘を打つ。
 浅くなる呼吸を自覚しながら、慌ててライトを消した。

 真っ暗闇の中に放り出され、右も左も分からなくなる。
 思わずその場にしゃがみ込んだ。

 音の出どころを特定されているのなら、本当は移動した方がいいのだろう。

 だけど、この状況で下手に動いたら、見えない机や椅子とぶつかってさらに音を立ててしまうかもしれない。

 わたしは鍵をポケットに入れると、床に手をついた。
 手探りのその感触を頼りに、四つん這いの状態でゆっくり進んでいく。

 ──ぴちゃ……ぴちゃ……

 水音がはっきりと聞こえる。

 ──ズ……ズズ……

 重たいものを引きずるような音も近い。

 わたしは息を殺しながら扉の方向を目指す。

「!」

 ふと指先が何か冷たいものに触れた。
 そのまま手をもたげても感触は消えない。壁だ。

 床に膝をついたまま少し身体を起こし、ぴったりと壁に耳を押し当てる。

 ──ぴちゃ……ぴちゃん……

 ──ズズ……ズズズ……

 間近から聞こえていた。
 いままさに廊下にいる。

 壁越しに化け物の気配を感じ取り、全身が粟立つ。

 嫌でも昨晩の記憶が蘇ってきた。
 見つかったら、鉈で容赦なく真っ二つにされる。

「……っ」

 ぎゅ、と目を瞑った。
 もうあんな痛みと苦しみを味わいたくなんてない。

 お願いだから、早く通り過ぎて。
 わたしに気づかないで。
 どこかへ行って!

 凍てつくような空気の中、ひたすらそればかりを祈っていた。

 ──ぴちゃ……ぴちゃ……

 ──ズズ……ズ……

 かたかたと指先が震え出し、その振動が壁に伝わりそうでひやりとする。

 そっと手を引き、口元を覆った。
 震えながら、落ち着かない呼吸をどうにか押し込める。