教室の前方から調べていくことにした。

 黒板や掲示板には変化がない。
 教卓の上にも何もなく、屈んで中を覗いてみたけれど空っぽだ。

 続いてスチール書庫の中を漁り、ゴミ箱もひっくり返してみたものの、なかなか見つからない。

(机、は……)

 教室内を振り向いたとき、端然(たんぜん)たるそれらについ圧倒されてしまった。

 いちいち椅子を引いて中を確かめなければならないため、時間がかかりそうだ。

(でも、やるしかないよね)

 もしこの中のどれかに屋上の鍵が隠されていて、それを見逃して崩落してしまったら、わたしがみんなを殺したも同然だろう。

 気を抜かず、ひとつひとつ照らして確かめていった。

 教科書が置き勉されていたり、プリントがくしゃくしゃに潰れていたり、そんなものは見つかったけれど、目当ての鍵は全然見つかる気配がない。

(大丈夫かな……)

 あまりに見つからないから、次第に不安になってきた。

 この探し方で合っているのだろうか。
 もう既に何かを見落としているのかもしれない。

 息をつき、次の席へと移る。
 音を立てないように椅子を引き、屈んでライトを向けたそのときだった。

「……っ!?」

 ガッ! と思いきり何かに腕を掴まれた。

 突然のことに息をのみ、信じられないで硬直してしまう。

「なに……!?」

 取り落としそうになったスマホを慌てて持ち直し、掴まれた腕の方を照らす。

「え……?」

 心臓が止まるかと思った。
 目を疑う。

 わたしの腕を掴んでいる手は、机の中から伸びていた。
 青白い肌にはまるで生気がない。

(な、何がどうなって……!)

 ぎりぎりと締め上げられ、せり上がってきた恐怖が爆発しそうだった。

「やだ……っ! 離して!」

 及び腰になってしまいながらもあとずさり、必死で振りほどこうともがいた。

 わけが分からない。
 怖い。気味が悪い。

 これもまた、あの化け物以外の脅威ということなんだろうか。

「……っ」

 でたらめに腕を振り、机と反対側に引っ張る。

 やがて、ふいにぱっと解放され、わたしは反動で床に尻もちをついた。

 椅子を巻き込みながら倒れ込んだため、ガタン! と大きな音を立ててしまった。

 けれど、そのことやしたたかに打ちつけた身体の痛みに意識を向けている余裕なんてまったくない。

「はぁ……はぁ……」

 喉がからからに渇いて、息が切れていた。
 心臓は()り切れそうなくらい激しく打っている。

(何だったの……?)

 再び明かりを向けたものの、もう机の中の手は消え去っていた。
 はじめから何もなかったみたいに。────しかし。

「あ……!」