高月くんのその言葉には大いに説得力があった。
「……試すしかなさそうだね」
柚が言った。
全員の気持ちを代弁する形で。
屋上から飛び降りる、という突拍子もない方法で、本当にこの校舎を抜け出せるのかどうか。
「…………」
空っぽのキーボックスを見やる。
各フックの上に貼られたラベルの中から“屋上”というものを見つけた。
当然そこには何もないのだけれど、わたしたちが探すべき鍵はこれだ。
「時間制限がある。のんびりしてる暇はない」
高月くんがスマホの画面を見つつ言った。
「だな、予定通り分担して探そう」
時刻は0時20分────1階崩落まで残り40分くらいだ。
◇
柚とともに東階段を上った。
2階はいまのところ静まり返っている。
「北か南、どっち行く?」
正直なところどちらも変わらないだろう。
結局は一周できる造りになっているし、どちらかは行き止まりになっている、とかいうこともない。
ちがいがあるとすれば、北校舎側は図書室や資料室などの特別室が、南校舎側は各クラスの教室が並んでいるというくらい。
「柚はどっちがいい?」
「あたしはー……どっちでもいいけど、北かな」
「分かった、じゃあわたしが南側探すね」
「うん、またあとで」
柚と別れ、南校舎の方へ歩いていく。
怖くない、と言えば嘘になるけれど、とにもかくにも屋上へ出てみたい、という思いが強まっていた。
飛び降りてどうなるかは分からない。
だけど、校舎の中に救いはない。
結局はただ化け物に殺されるか、崩落に飲み込まれて死ぬか、どちらかだ。
スマホの画面をつける。
(バッテリーは……67パーセント)
夢の中で目を覚ました当初は100パーセントだったはずだ。
基本的にずっとライトをつけているせいか、それとも単にこの異空間のせいか、明らかに減りが早い気がする。
そういう意味でもあまり時間はかけられない。
唯一の光源を失ったら、鍵を探すどころじゃない。
この校舎の中では、目が慣れる、ということが不思議とまったくなかった。
照らしていないと足元さえ見えない。
窓の外は夜より深い闇で、当然ながら月も出ていないから、校舎内も暗黒に沈んでいるのだ。
────2階の南校舎側。
普段は馴染みのない3年生の教室が並んでいる。
東階段側の端、G組から順に調べていくことにした。
階段横にはお手洗いがあるけれど、東側は少しとはいえ北校舎寄りだ。
こちらは柚に任せて、わたしはあとで西側のお手洗いを見ることにする。
「…………」
教室の扉に手をかけ、そっと力を込めてみた。



