硬い奇妙な音がした。

「え、なに……?」

 みんなの耳にも確かに届いていたらしく、各々が緊張したように身構える。

 不安気にあたりを見回した、そのとき。

 ──パリィン!

 けたたましく甲高い音が頭上から響いた。

「危ない」

「伏せろ!」

 何が起きたのか、誰がそう叫んだのか、はっきりとは分からなかった。

 ほとんど反射で身を縮め、言葉通りにする。

 床に屈んだとき、誰かの影がわたしに覆い被さった。
 背中から腕を回され、肩を抱くみたいにして引き寄せられる。

「……!」

 ──ガシャン!

 ──ガララ……

 激しい音が間近で聞こえた。
 驚いて肩が跳ねる。

 真っ暗な中、スマホの明かりを反射する透明な破片が見えた。

 床に散らばる大小さまざまなそれらを目の当たりにして、ようやく事態が飲み込めてきた。

 落ち着かない浅い呼吸を繰り返したまま、ライトを天井に向ける。

「電気が……」

 突如(とつじょ)としてひびの入った蛍光灯が割れ、落ちてきたのだ。

「何で……? いきなり?」

 困惑と衝撃を滲ませた柚の声を聞き、遅れて皮膚が粟立(あわだ)つ。

 その拍子に身体が感覚を取り戻し、肩のあたりに手が触れていることに気がついた。

 すぐ近くに気配がある。

 半分振り向くようにして見上げると、ぼんやりと朝陽くんの横顔が目に入った。
 不可解そうに天井を見上げている。

「あ、あの……朝陽、くん」

 戸惑いながら小さく呼ぶと、はっとした彼がこちらを見下ろす。

 至近距離で目が合って心臓が跳ねた。

「あ……ごめん!」

 ぱっと感触が消える。
 慌てたように朝陽くんがわたしから離れた。

 図らずも高鳴る鼓動を自覚しながら思い至る。
 彼は、降り注ぐ鋭い破片からとっさに庇ってくれたんだ。

「……なに、あんたらいつの間にそんな仲になったの?」

 柚が(うわ)ついた声色で言いながらわたしたちに光を向けた。
 その眩しさに思わず目を背ける。

「そんなんじゃ────」

「な、なあ。あれ……」

 反論しかけた朝陽くんの声は夏樹くんに遮られた。

 緊迫した様子で再び黒板の方を照らし、震える指先を向けている。

 (いぶか)しみながらその先を追い、思わず息をのんだ。

 “人殺し”。

 ────黒板の文字が変わっている。

 血で書いたみたいに禍々(まがまが)しく、濃い赤色にぞくりと背筋が凍りついた。
 つ……とその血がゆっくり垂れていく。

「ひと、殺し……?」