白い光で照らしてみると、確かに見慣れた教室の風景が飛び込んできた。

 わたしは自分の席で眠っていたようだ。
 静かに椅子を引き、立ち上がる。

 ライトを周囲に振り向けると、4人の人影を見つけた。

「ん……?」

 そのうちのひとつ、朝陽くんが小さくこぼす。

 そろりと起き上がり、ライトの、というかわたしの方を向いた。
 彼の顔に当てないよう、急いで光を下に向ける。

「あれ、花鈴……? ここは……」

「教室、だよね。……たぶんもう始まってる」

 硬い声で告げると、彼ははっとした顔になる。
 音を立てないよう慎重に立ち上がった。

 ふたりでほかの人影、柚と夏樹くん、高月くんを起こしに向かう。

 それぞれも一様に、自分の席で机に伏せるようにして眠っていた。

「うわ、マジだ……」

 夏樹くんが明かりを黒板に向けて照らした。

 “飛び降りて死ね”。

 昨晩と同じ言葉がチョークで殴り書きされている。

「外も……やっぱ地面ないね」

 窓から見下ろした柚が呟く。

 校舎はやはり、深淵(しんえん)の暗闇にぽつんと浮かび上がっているみたいだ。
 今いる本校舎以外が消え去っている。

 そういえば最初にチャイムが鳴っていたような気がするけれど、今日はあの揺れも轟音(ごうおん)もなかった。

 外側の崩落はきっと昨日のままなのだ。

(いまは……)

 時刻を確かめようと壁かけ時計を見上げて驚いた。

「えっ」

 長針も短針も秒針も、ぐるぐるとでたらめに回り続けている。
 完全に狂ってしまっていた。

「……気味悪いな」

 引きつったような声で高月くんが呟く。

 スマホの方で確かめてみると、深夜0時を過ぎたところだった。

 自室のベッドで目を閉じてすぐの感覚だったけれど、そんなに経っていたのだろうか。

 それとも夢の世界は時間の流れがちがう?

「……本当に始まったじゃん。また、悪夢が」

 やっとそのことへの実感が湧いた、といった様子で夏樹くんが呟く。

 朝の時点で高月くんが言っていた通りなのかもしれない。

 わたしたちは囚われた。
 悪夢はまだ、始まったばかり────。

 そんなことを思ったときだった。

 ──ピシ……