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 放課後、朝陽くんと柚と3人で帰路についた。

 夏樹くんは部活へ行き、高月くんは“塾があるから”と先に帰ってしまったのだ。

「ねぇ。一応さ、寝る時間合わせといた方がよくない?」

 何気なく放たれた柚の言葉にはっとする。

「確かに! タイミングがずれたらみんなと会えないかも……」

「てか、そもそも“夢”ってことはさ、眠らなければ見ずに済むってことじゃないの?」

 つまり、殺されずに済む────。
 朝陽くんの言うことは十分にありえそうだった。

「ま、でもまだ今夜もその夢見るって決まったわけじゃないからねー。あれだけ色々話したけど」

 柚は「だから」と続ける。

「確かめる意味でも今日は寝てみるべきかなって」

 わたしは口をつぐんだまま視線を落とした。

 みんなであれこれ考えたけれど、結局すべて憶測だ。
 確かなことなんて全然ない。

 いくら夢の中でも死にたくなんてない。
 だけど、リミットが存在するのなら、嫌でも積極的にならざるを得ない。



 やがて岐路(きろ)にさしかかると、足を止めた柚がわたしたちを振り返った。

「じゃあ寝るのは11時ね。ふたりにはあたしから連絡しとく」

「……分かった」

「じゃまたあとで」

 きびすを返した彼女に手を振り返す。

 遠ざかっていく背中を眺めてから歩き出したとき、朝陽くんがぽつりと呟いた。

「何か……すごいね、小日向(こひなた)さんって」

 驚き半分、感心半分、といった具合だ。
 わたしは小さく笑う。

「うん、そうなの。柚っていつも明るくて強いんだ」

 初めて話したときから、内気なわたしとはまるで正反対だった。

 さっぱりしていて、きらきらの笑顔が眩しい、向日葵みたいな女の子。

 何事にも臆することのない強さを、いつでも遺憾(いかん)なく発揮していた。

「────日南は変わってなさそう」

 ふとこぼされたひとことに、弾かれたように顔を上げる。

 こちらを向いた朝陽くんは、目が合うとふっと笑った。