「いやぁ……無理だろ、あんなの」

 夏樹くんも同じことを思ったのか、顔をしかめて苦い表情を浮かべた。

「じゃあ何? どっかから脱出できるってこと? 外がないのに」

「屋上……かも」

 わたしは言った。
 どうしても自信なさげな声になる。

「屋上?」

「あ、そうそう。俺と日南(ひなみ)で教室行ったらさ、黒板に書いてあったんだよ。“飛び降りて死ね”って」

 思い出したように朝陽くんが言った。

「“死ね”!?」

「うん、それで……何かあるかもって思って成瀬くんと屋上を見にいったの。でも鍵がかかってて」

 そう続けたわたしに、柚が困惑した顔を向けてくる。

「いや、けどだめじゃん。“死ね”って……飛び降りたら死ぬんじゃ、屋上に出られても意味ないし」

「飛び降りなくてもどうせ殺されるだろ……」

 怯えたように夏樹くんも同調する。

「試す価値はあるんじゃないか?」

 高月くんの言葉に勢いよく柚が顔を上げた。

「本気で言ってんの!?」

 頭の中に、目の当たりにした深淵(しんえん)の闇が蘇る。

 試しに投げた夏樹くんのスニーカーは奈落(ならく)の底へと真っ逆さまだった。

 たとえば屋上へ出られたとして、そこから飛び降りても、結局はそうなって死んでしまうんじゃないだろうか。

 その可能性は大いにあると言えるだろう。
 “飛び降りて死ね”という文言からしても。

「片っ端から可能性を確かめてくしかないだろ、どのみち」

 ……確かにそれもそうだ。

 出口のない隔絶(かくぜつ)された校舎に閉じ込められ、右往左往していても、なす術なく化け物に殺されるだけ。

 そのことは昨晩の時点で思い知った。

「でも、鍵が……」

「校舎内に隠されてる。昨日確かめた」

 高月くんが淡々と言ってのける。

「放送室と職員室は開かなかったが、ほかに開いてる教室があった。そこで音楽室やら3-Eの教室やらの鍵を見つけたんだ」

「つまり、屋上の鍵もそうやって探せってことか」