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 ──キーンコーンカーンコーン……

 耳障りなノイズとともに割れたチャイムが鳴り響いた。
 目を覚まし、そっと身を起こす。

 暗闇の中を白い光が漂っていた。
 取り出したスマホで照らすと、ちょうど同じようにしている4人の姿があった。

「始まったかぁ」

 夏樹くんの声が聞こえる。

 嫌いな授業が始まってしまった、くらいのテンションだった。
 当初に比べると信じられないくらいの余裕と落ち着きぶりだ。

 静かに立ち上がり、誰からともなく黒板の前あたりに集まる。

「……最後になるかな」

 朝陽くんが呟いた。少し不安気に聞こえる。

「そうなるだろうな。僕たち全員、それか少なくとも僕と日南と成瀬は」

 高月くんの言葉を受け、左腕の傷が頭に浮かんだ。
 残機1という追い込まれた立場にあることを改めて実感する。

「…………」

 ひっそりと息をついた。

 大丈夫、と声に出さずに返す。
 そうはさせないから。彼らを死なせたりはしない。

「じゃあ、わたし────」

「ちょっと待った!」

 化け物の元へ向かおうとしたところ、柚に引き止められた。

 その勢いの割に、ふたこと目が出てくるまでに間があった。
 慎重に言葉を探しているのだと思う。

「あたし……やっぱり、いま頭の中にあるこの記憶が偽物だなんて思えない」

「え?」

 突然、何を言い出すのだろう。
 予想外の言葉に驚いてしまう。

「てか、思いたくない。この中に“裏切り者”がいるのは分かってるけど……それが誰だろうと殺せるわけないと思う。だから」

 こちらに向き直った柚は、まっすぐな眼差しを注いできた。

「あたしも花鈴の言ってた可能性に懸けてみたい。一緒に」

 化け物と、白石芳乃と話してみる、という方法のことだろう。
 まさか賛同してもらえるとは思わなくて、目を見張ったまま彼女を見つめてしまう。

 でも、思えばそうだった。
 柚はいつでも、わたしを信じてくれていた。

 わたしには本心を見せてくれたし、命懸けで守ってもくれた。
 一度は道を逸れたけれど、あんなことが繰り返されることは二度とないと言いきれる。

「俺も!」

 すぐさまそんな声が上がって、見ると夏樹くんが手を挙げていた。
 わたしと目が合うと、少し気まずそうに逸らして腕を下ろす。

「だって、花鈴だけに背負わせるんじゃ、おまえが犠牲になりに行くようなもんだろ? いや、もちろんうまくいくって信じてるけどさ」

 慌てたようにそう言うと、ひと呼吸置いた。
 眉を下げつつ、続きを口にする。

「色々あったけど……てか、色々しちゃったけど。ひとりを見殺しにするとかできない。あのときは本当ごめん」