3階へ上がり、北校舎側の廊下を歩き出す。

 (おおむ)ね2階と同じ状態だ。
 ここは高月くんが探索を進めてくれていた。

 開いている教室は素通りし、閉まっている教室は手持ちに鍵がないかを確かめていく。
 多目的室、実験室、準備室を過ぎ、次は理科室だ。

 朝陽くんが扉を照らし出す。
 “それ”を目の当たりにした途端、息をのんで硬直した。

「ひ……っ」

「びっくりした」

 開け放たれた戸枠の部分に人体模型が立っていた。
 光と影の具合でよりいっそう不気味に見える。
 威圧的にわたしたちを見下ろしていた。

「ゆ、柚の言ってた通りだ」

 理科室内で人体模型に追われる、という話。
 恐らく高月くんが追われながら鍵を探したのだろう。

「そうだね……。早く行こ」

 彼に促され、逃げるように人体模型の前を通り過ぎる。

 その間、ぎょろ、と無機質な目がわたしたちを捉えて離さなかった。
 ぞわぞわと悪寒(おかん)が背筋を這う。

 理科室からは出てこないと分かっていても、とって食われるんじゃないかとひやひやする。
 幸いにもそうならずに済んだ。

 その隣の準備室は開かなかったけれど、鍵も持っていない。
 さらにその隣の書道室は調べ終えてあり、扉が開いたままだった。

「朝陽くん、いま何時?」

「えっとー、1時59分。……あ」

 わたしも心の中で同じように「あ」と思った。
 ロック画面に表示されていた時間がちょうど2時に切り替わったのだ。

 ──キーンコーンカーンコーン……

 耳障りなチャイムが鳴り響いた。

 ──ゴォォオ……!

 轟音(ごうおん)が聞こえ始めると、またしても校舎が揺れ出す。
 壁に手をついて平衡感覚を失わないよう耐えた。

 吹き抜けの方を見下ろすと、崩れ去っていく2階が光の届く範囲で窺える。

 それを見て、いま気がついた。
 ここまで長く生き延びたのは初めてのことだ。
 それもこれも、みんなのお陰だった。



 ややあって揺れがおさまると、2階が完全に崩落した。

「……大丈夫?」

「うん……」

 頷いて答えたものの、心臓が強く打っているのを自覚した。
 得体の知れない不安が絡みつく。

 はっきり言って、ここからはわたしにとって未知の時間だ。
 何が起こるか、どんなものか分からない。

 校舎が狭まっていく分、化け物に遭遇(そうぐう)する確率も上がるだろう。
 危険が増しているのは間違いない。