強い意思を持ってそう言うと、夏樹くんは気圧(けお)されたように口をつぐんだ。
 だけど今度は柚が不服そうな顔をする。

「でも、実際かなりやばいじゃん。分かってる?」

 それはその通りだ。
 終わらせる方法は分かったものの“裏切り者”を特定するには至っていないし、いまのところその気配もない。

 だけど、夜は毎日必ずやって来る。
 “裏切り者”を見つけて殺す前に、わたしが死ぬ方が早いかもしれない。

 だから一時しのぎでも残機を分け合ってどうにか(しの)ぐのが現実的だ。
 そう言いたいのだろう。

「何だったらあたしのこと殺したっていいよ。いまのところ余裕あるし」

「やめてよ!」

 自分でも驚くくらい強く拒んでしまった。

 夢の中とはいえ、明らかに死ぬことへの感覚が鈍って麻痺している。
 死が軽いものになっている。

 屋上でのときと同じだ。
 だからこそ、わたしを思っての言葉だと分かっていても素直に受け取れなかった。

 怖くて苦しくて不安でたまらない。
 先行きが見えないのにあとがないという状況が拍車(はくしゃ)をかけていた。
 揺れる感情が止まらない。

「……花鈴」

「ごめんね……」

 凍えるような声で小さく呟いた。

 両手を握り締めても震えを抑えられない。
 止まない恐ろしさが肺を圧迫してくる。

 一度、大きく息を吸ってから深く吐き出した。
 弱気にしてくる負の感情をぜんぶ追い出すつもりで。

「────とりあえずいまは鍵を探そう」

 ひと息で告げる。

「そういうことはまた明日考えるから」

 これ以上、反論が出てくる前に、自分を殺せとまた誰かが言い出す前に、わたしはそう続けた。
 その“明日”を迎えるために、いまできることはひとつしかない。



 南校舎側へ移り、夏樹くんも加えて探索を進めていく。

 1階崩落までの残り時間は3分を切っていた。
 そのため4人で総力を挙げて、大急ぎで調べる。

「保健室の鍵ってあったんだっけ!?」

「ちょっと待って。えっと……」

 ポケットの中からいくつかの鍵を取り出し、てのひらの上に並べる。
 プレートを照らして確かめると、その中に“保健室”と書いてあるものを見つけた。

「あった!」

「早く……!」

 焦って何度も取り落としそうになりながら、何とか解錠する。
 扉をスライドさせ、柚とともに転がり込んだ。

 朝陽くんと夏樹くんはそれぞれ、さらに西側の教室を確かめにいってくれている。

 わたしたちは戸棚を開けたり、ベッドの布団を捲ったり、ワゴンを倒して中身をひっくり返したりしながら、手早く鍵を探していった。

「あ、見つけた!」