「よし、じゃあ本気出して鍵探すぞ! 花鈴のためにも」

「ああ、急ごう。悪いが、3人で動くなら1階を任せてもいいか?」

 揚々(ようよう)と言った夏樹くんに高月くんが続く。
 わたしは慌てて頷いた。

「もちろん」

「じゃあ俺が2階行くわ。朔は3階頼むな」

「分かった」

 そんなやりとりから、団結してまとまったことを強く実感できてますます嬉しくなる。

 あたりを警戒しつつ教室を出ていくふたりに続こうとしたけれど、ふと足が止まった。
 室内の方を振り返る。

「……どうかした?」

 声を落とした朝陽くんに尋ねられる。

「そういえば、ここにも何かあったりするのかな?」

 いつも(おの)ずと素通りしていた、スタート地点であるわたしたちの教室。
 ここにも鍵やメモなどが隠されていることはあるのだろうか。

「言われてみればそうね。何もないだろう、って無意識のうちに決めつけてスルーしちゃってたけど」

 既に廊下へ出ていた柚が言いながら戻ってくる。

「3階は朔の担当だけど、ここだけ俺らでさっさと調べとこうか」

「そうしよ。朔もたぶんスルーするし」

 先に出ていった高月くんは、どうやら北校舎側へ向かったようだ。
 普通教室より手こずることの多い特別教室を優先的に終わらせておく、という考えだろう。

 夏樹くんも既に2階へ下りていったため姿はない。
 わたしたちも急がないと。



 3人で教室内を見て回るも、鍵やメモは見つからなかった。
 ただ、予想外のものを発見した。

(何だろう、これ)

 窓際一番後ろの席。
 図書委員を務めている女の子の机から、ビーズでできた指輪が出てきた。

 カラフルなそれは小さい子向けのおもちゃみたいだ。
 糸が緩んでいるのがひと目見て分かる。

 ただの忘れものだろうか。
 あるいは白石芳乃に関わるヒント……?

「何かあった?」

「んー、何もないね」

「花鈴はどう?」

 そう尋ねられ、はっと我に返る。

「あ……ううん。何も見つからなかった」

 結局、前者だと判断して机の中に戻しておいた。

 これまで、ヒントと(おぼ)しきものはすべてメモだった。
 だけど、これは異質だ。確信が持てない。

 余計な混乱を招いても申し訳ないし、無関係だったらただ時間を浪費(ろうひ)するだけだ。
 一旦、見なかったことにしておこう。

 1階へ向かうため廊下へ出て、ぴしゃりと教室の扉を閉めておいた。

 ここを閉めておく意味は特にない、とあとから気がつく。
 この一連の動作もまた癖になっているようだ。

 ──ぴちゃん……

 ふいにそんな水音が大きく響いてきた。