◇
ベッドに腰かけ、左腕の傷を眺めた。
残機は1。
眠らない、という選択肢もないわけではない。
だけど、日中に寝落ちしてしまうことが一番怖かった。
“日没前の夢”は夢でありながら現実でもある。
うっかり殺されたのではたまらない。
1日や2日くらいなら眠らなくても耐えられるかもしれないけれど、身体の状態は夢の中にも影響する。
不調を来したり、まともな判断力が鈍ったりするのは避けたかった。
──キーンコーンカーンコーン……
いつの間にか眠りに落ちていたわたしは、重々しいチャイムの音で目を覚ました。
いつもの流れでスマホのライトをつけ、音を立てずに立ち上がる。
まだ眠っている面々を起こして回った。
「始まったか」
高月くんが呟くように言う。
わたしはつい、黒板に目をやった。
“飛び降りて死ね”────今夜は絶対に、何がなんでも生き延びなければ。
「さて……誰がどこ行く?」
「俺は花鈴と同じとこ」
間髪入れずに朝陽くんが言った。
驚いて彼を見ると、真剣な眼差しが返ってくる。
「今夜を最後にはさせないから」
……心が震えた。嬉しかった。
わたしを守ろうとしてくれる、彼の決意と優しさが染み渡る。
「あれあれ? やっぱ、ふたりってそういう……?」
冷やかすように柚が言う。
その顔には面白がるような笑みが浮かんでいた。
「ちょ────」
「でも、あたしも花鈴についてく」
慌てて反論しようとするも、最初からとり合うなどなかったらしく、彼女は堂々とそう宣言した。
「おいおい。邪魔してやるなよ、柚」
夏樹くんまで何を言い出すのだろう。
何だか暑くなってくる。
「それもそうなんだけどさ、残機1なんてやっぱ危ないじゃん。だから、いざというときはあたしが盾になる」
それは思いもよらない言葉だった。
驚いてまじまじと彼女を見る。
「柚、それは……」
「花鈴がなんて言おうともう決めてるから。諦めてあたしたちに守られなって」
一点の曇りもなく得意気に笑う。
向日葵みたいに明るくて眩しい笑顔だ。
つい朝陽くんの方を窺うと、こくりと心強い頷きが返ってきた。
何度、そうして自信をもらったことだろう。
「……ありがとう」
しみじみと告げる。
昨日までなら信じられないような展開だった。
わたしたちの関係性は、もう修復できないほど粉々に砕け散って、みんなばらばらになってしまうのではないかと怖かった。
(そうならなくて本当によかった……)
こうして手を取り合って、同じ方向を向いて、歩幅を合わせて歩き出せて。
協力しよう────。
もしかしたら、そんなわたしの唯一の主張が響いたのかもしれない。
何だってよかった。
目の前の現実は、あたたかいものだったから。
ベッドに腰かけ、左腕の傷を眺めた。
残機は1。
眠らない、という選択肢もないわけではない。
だけど、日中に寝落ちしてしまうことが一番怖かった。
“日没前の夢”は夢でありながら現実でもある。
うっかり殺されたのではたまらない。
1日や2日くらいなら眠らなくても耐えられるかもしれないけれど、身体の状態は夢の中にも影響する。
不調を来したり、まともな判断力が鈍ったりするのは避けたかった。
──キーンコーンカーンコーン……
いつの間にか眠りに落ちていたわたしは、重々しいチャイムの音で目を覚ました。
いつもの流れでスマホのライトをつけ、音を立てずに立ち上がる。
まだ眠っている面々を起こして回った。
「始まったか」
高月くんが呟くように言う。
わたしはつい、黒板に目をやった。
“飛び降りて死ね”────今夜は絶対に、何がなんでも生き延びなければ。
「さて……誰がどこ行く?」
「俺は花鈴と同じとこ」
間髪入れずに朝陽くんが言った。
驚いて彼を見ると、真剣な眼差しが返ってくる。
「今夜を最後にはさせないから」
……心が震えた。嬉しかった。
わたしを守ろうとしてくれる、彼の決意と優しさが染み渡る。
「あれあれ? やっぱ、ふたりってそういう……?」
冷やかすように柚が言う。
その顔には面白がるような笑みが浮かんでいた。
「ちょ────」
「でも、あたしも花鈴についてく」
慌てて反論しようとするも、最初からとり合うなどなかったらしく、彼女は堂々とそう宣言した。
「おいおい。邪魔してやるなよ、柚」
夏樹くんまで何を言い出すのだろう。
何だか暑くなってくる。
「それもそうなんだけどさ、残機1なんてやっぱ危ないじゃん。だから、いざというときはあたしが盾になる」
それは思いもよらない言葉だった。
驚いてまじまじと彼女を見る。
「柚、それは……」
「花鈴がなんて言おうともう決めてるから。諦めてあたしたちに守られなって」
一点の曇りもなく得意気に笑う。
向日葵みたいに明るくて眩しい笑顔だ。
つい朝陽くんの方を窺うと、こくりと心強い頷きが返ってきた。
何度、そうして自信をもらったことだろう。
「……ありがとう」
しみじみと告げる。
昨日までなら信じられないような展開だった。
わたしたちの関係性は、もう修復できないほど粉々に砕け散って、みんなばらばらになってしまうのではないかと怖かった。
(そうならなくて本当によかった……)
こうして手を取り合って、同じ方向を向いて、歩幅を合わせて歩き出せて。
協力しよう────。
もしかしたら、そんなわたしの唯一の主張が響いたのかもしれない。
何だってよかった。
目の前の現実は、あたたかいものだったから。



