じっとそれぞれの目を見据え、疑わしそうに柚が言う。

 いつもみたいに腕を組んでいるのかと思ったけれど、そうではなく両腕を交差させて掴んでいるだけだった。

 相手はとうに死んだ人間だということで、無意識のうちに寒気を感じているのかもしれない。

(確かに……)

 誰ひとりとして嘘つきには見えない。
 これでは“裏切り者”を殺すどころか、見つけられるかどうかすら怪しい。

「いや本当、怖ぇわ。溶け込みすぎだろ……」

 夏樹くんも引きつった表情で各々を見やる。

「あ! じゃあさ、夢の中で花鈴が片っ端から殺していけば?」

 思いついたように言った柚に「え?」と反射的に返していた。

「“裏切り者”を殺れればラッキー、間違ってても残機が増える。ノーリスクハイリターンで、まさにウィンウィンじゃない?」

 生き生きとした柚の表情を見て、思わず苦い気持ちになった。

 考え方としては間違っていないのかもしれない。
 だけど、そんな残酷なことを平然と提案できるなんて、と怖くなる。

 先ほどみんなで口にしていた“ゲーム”という単語が自然と浮かんだ。
 彼女は完全にゲーム感覚だ。

 命の重みが、死に対する認識が、分からなくなってずれ始めているように思えてならない。

 でも、それは柚が悪いわけじゃない。
 何もかもこの悪夢のせいなのだ。
 少なからず感覚を狂わされた。

「無理だよ、できない……」

「だろうな。それに、殺された方の残機は減るだろ。そもそも日南が“裏切り者”じゃないって保証はどこにもない」

「そっかぁ」

「あのさ。まず“裏切り者”を殺すのって、現実で、じゃないの?」

「それな、俺も朝陽と同じこと思った」

 はっとした。
 言われてみれば、それは当然かもしれなかった。

 みんな既に夢の中で1回以上死んでいるけれど、現実では全員同じように生き返っている。
 夢の中で手出ししても無意味なのだ。

 すなわち、当てずっぽうは通用しない。失敗したら終わりだ。
 現実での死は、当たり前だけど本当の死を意味する。

 もし“裏切り者”以外を殺してしまったら────。
 ぎゅ、と冷えた両手を思わず握り締めた。

(絶対に間違えられない)