何かが腑に落ちたようなもの言いに、首を傾げてしまう。

「これ、って?」

「あー、そうだった。見てよ」

 そう言いながら取り出したスマホを操作し、わたしたちに画面を向ける。
 メモの写真だった。

 “殺セ”。

 既に化け物と化した白石芳乃の言葉なのだろう。
 これまでとちがって、血の滲んだ赤い文字で記されている。
 ほかのメモとは明らかに毛色がちがった。

「昨日は荒れてたから無視しようかとも思ったんだけどさ、こんなだったから一応ね」

 柚は肩をすくめる。

「……“裏切り者”を、ってこと?」

「そうだと思う。いまの話聞いたら」

 “裏切り者”を見つけて殺す。

 それが白石芳乃の求めていることであって、悪夢から抜け出す方法────。
 その考えは正しいと、このメモが、いや、白石芳乃自身が肯定(こうてい)しているような気がした。

「犯人のことは殺しても殺し足りないって感じか」

「……だね。それだけ恨んでるってことは、やっぱり白石芳乃にとっても“裏切り者”だったんじゃないかな」

「わたしたちにとっても、白石芳乃にとっても“裏切り者”……」

「“裏切り者”は嘘ついて、俺たちを騙してるんだよな。いまこの瞬間も演技してる。ま、この場にいない朔がそうかもしんないけど」

 何度確かめてもひとり増えていたクラス名簿。
 “裏切り者”は間違いなく、わたしたちの中に存在している。

「うわ、何かゲームみたいな話になってきたね。そういうゲーム、実際あるし」

「どんな?」

「嘘つきを見つけて追放(ついほう)するゲーム」

 紛れ込んでいる人殺しを、犯人を、“裏切り者”を見つけ出して、自分たちが処刑する。
 要するにそういうことなのだ。

「……白石芳乃ね」

 ふと、夏樹くんが意味ありげにその名前を口にした。
 柚が(いぶか)しむように顔を上げる。

「なに? てか、あんた何でその名前知ってんの? あ、まさか夏樹が“裏切り者”……!?」

「ちげーよ! 今朝、花鈴からひと通り教えてもらったんだよ」

 色々調べていくうちに判明した事実や行き着いた可能性については、確かにわたしから説明しておいた。

「そういうことじゃなくてさ、何か……引っかかってて」

「何に?」

「白石芳乃って名前、聞いたことある気がする」

「ニュースとか記事で見たんじゃないの?」

「そう、なのかなー?」

 夏樹くんは考え込むような顔で首を(ひね)る。彼自身、曖昧なようだった。

 何かの記憶と混同しているのか、思い違いをしているのか、いずれにしても答えが出てくる気配はない。