不機嫌そのものの態度で、高月くんは教室から出ていってしまった。

 彼の姿が見えなくなってから、引き止めるのを失念(しつねん)していたことにやっと気づく。

「……だよな。花鈴、本当ごめん」

 唇を噛み、夏樹くんが再び謝ってくれる。
 わたしは緩やかに首を左右に振った。

「そう思うなら、協力しよう? みんなで悪夢から抜け出すの」

 わたしの言う“みんな”の中には、もちろん高月くんも含まれている。
 ひとりでどこかへ行ってしまったものの、彼のことは正直あまり心配していなかった。

 高月くんは頭がよくて冷静だ。
 感情に左右されることなく、最適解をいつも正確に見極められる。

 先ほどはああしてふたりの謝罪を突っぱねたけれど、本当のところは何もかも分かっているはずだ。

 だから、大丈夫。
 わたしたちが再びばらばらになることは、きっとない。



     ◇



 次の授業の時間、高月くんを除いた4人で屋上へ出た。
 人目を気にせず話し合うのにここは都合がいい。

「なあなあ! 俺と花鈴はすごいことに気づいたぜ」

 開口一番、得意気に夏樹くんが言った。
 な、と同意を求められ、わたしも頷く。

 彼は一切気まずさを感じていないようだ。
 さすがはフレンドリーなムードメーカーだけあって切り替えが早い。

「なに? すごいことって」

 不思議そうな表情で瞬く朝陽くんに寄り、彼はにんまりと笑う。

「悪夢を終わらせる方法が分かった」

 白石芳乃はただ闇雲(やみくも)に犠牲者を増やしたいだけじゃなかった。
 当初想定していたよりもよっぽど、彼女の怨念(おんねん)は根深い。

「え、だからそれは“裏切り者”を見つけることでしょ? それはあたしたちも知ってるって」

「ちがいますー。いや、ちがわねーけど、それだけじゃない」

 もったいぶるように間を空けてから、夏樹くんは再び口を開いた。

「“裏切り者”を見つけて殺す」

 親指の先を自身の首に向け、ぴっと真一文字(まいちもんじ)に動かす。
 ありえないと分かっているけれど、そこから鮮血(せんけつ)があふれてくる幻を見た。

「殺す……?」

 目を見張った朝陽くんが聞き返す。
 柚も衝撃を受けたようではあったけれど、何かひらめいたようにはっとしていた。

「そっか……! ()()、そういう意味なんだ」