静寂を破るように鈍い音が響いた。
何かと何かがぶつかる衝撃音。
(え……?)
いまのは廊下の方から聞こえた。
化け物が何かをしているのだろうか。
──ガン……ッ
──ガン……ッ!
また同じような音が聞こえてくる。
いったい、何をしているの……?
「フフ……アハハ……」
ひゅ、と喉の奥を冷たい空気が通り抜けた。
奇妙な音と化け物の笑い声がこだましている。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ」
──ガン! ガン! ガンッ! ガンッ!
突如としてつんざくように響き渡った声と音に、びくりと肩が跳ねた。
(何なの……!?)
──ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
止まない打撃音。
狂った笑い声と合わさって、聞いていると頭がおかしくなりそうだった。
意味が分からない。怖い。気味が悪い!
耳をふさぎ、思わずその場にうずくまる。
(もうやめて……!)
絶対、わたしたちに気がついている。
こうやって追い詰めて楽しんでいるにちがいない。
──ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
脳を直接揺さぶられているみたいに頭が痛くなってくる。
息が苦しい。
あまりの恐怖に目眩がした。
「……俺が囮になる」
ふいにそんな朝陽くんの声が聞こえ、はっと目を開ける。
激しい音が響いているのに、どうしてかそれは切り取られたみたいにはっきりと聞き取れた。
「本気か?」
「試したいことあるし、ちょうどいい」
思わず振り返ると、ぼんやりとした光が闇を裂いていた。
ライトではなく画面の明かりを頼りに、朝陽くんが扉の方へ向かっている。
(待って……)
そう思うのに口には出せないまま、震えながら彼を目で追うことしかできない。
ぱっと光がひときわ強くなった。
ライトをつけた朝陽くんが何の躊躇もなく一気に扉を開ける。
──ガララッ
その瞬間、音と笑い声がぴたりと止んだ。
「来い、化け物! こっちだ」



