そう静かに息巻くとさっさと扉の方へ歩き出し、闇の中に溶けていってしまう。
 そこら中に漂う死の気配をかき分けながら。

「ま、待って……。柚!」

「やめとけ、日南」

 追いかけようとしたものの、即座に引き止められた。
 狼狽(うろた)えたまま高月くんを振り返る。

「でも」

「あいつらがいがみ合うのは、はっきり言って仕方ない。昨晩や今朝のことを思えば、乾だって殺されても文句言えない」

「そんなこと」

「一旦放っておくしかない。下手に近づいて、僕たちまで殺されたんじゃたまらないだろ」

 高月くんの言葉がまったくもって理解できないわけじゃなかった。
 でも、だからこそ素直に引き下がれない。

 柚と夏樹くんの殺し合いを傍観(ぼうかん)していることが正しいとは思えない。
 ましてやどちらかの、あるいはどちらともの死を前提にするなんて。

「分かってるのか? 今夜は3人で鍵を探すしかないんだ。急がないと」

 わたしの心をまるごと見透かしたみたいに、口にする前から反論をねじ伏せられた。

 それで分かった。
 彼は、ふたりがどうなってもいいなんて思っているわけじゃない。

 すべてを理解した上で、葛藤(かっとう)を経た上で、それでも冷徹(れいてつ)に割り切ったのだ。
 いまやるべきことを見失っていたのは、わたしの方だった。

「……そうだね。ごめん」

 何があろうと秒読みは止まってくれないし、化け物は常に命を狙ってくる。

 いまできるのは、屋上の鍵を見つけて生き延びることだけだ。

「じゃあ、さっそくだが────」

「俺は花鈴と一緒に動く」

 堂々と朝陽くんが言う。
 普段とちがって、そうしてもいいか、と確かめるようなニュアンスではなかった。

「特に残機に余裕ないし、狙われたら怖いから……」

 守る、と言ってくれようとして、だけど高月くんの手前、ちょっと気後れしたみたいだった。

「……ありがとう」

 朝陽くんの思いやりを噛み締めながら告げる。
 こんな状況だからこそストレートに染みた。

「そうだな、じゃあおまえらと僕とで手分けしよう」

「待って。高月くんも一緒にいよう」

 面子(めんつ)的に何となく初日と重なって、反射的にそう言っていた。
 特にいまは3人で固まっていた方がいいように思える。

「僕は男だし、もし乾に襲われても何とか抵抗できるが」

「いいから、朔。警戒するべき対象が増えたんだし、身の安全を優先しよう」

 化け物に襲われたらそのときはそのときだけれど、それ以外なら何かあっても3人いれば対処できるはずだ。

「効率悪そうだが……仕方ないな」



     ◇



 わたしたちは1階へ移動して、まずは昇降口から調べ始めた。

 また臓物(ぞうもつ)が飛び出してくるんじゃないか、と終始ひやひやしていたけれど、今回は何ごともなく済んだ。
 ただし、鍵も見つからなかった。

 ホールへ戻り、あたりの様子を窺いながら耳を澄ませてみる。