「うちのクラス、39人だよね。俺たちの名前は……」

 朝陽くんの睫毛が揺れる。
 いつの間にか、その綺麗な横顔に釘づけになっていた。

 見つめていると、とん、と肩がぶつかって、そのわずかな衝撃で我に返る。

「あ、ごめ────」

 慌てた朝陽くんが顔を上げ、こちらを向く。

 びっくりして息が止まった。
 あと一歩で触れそうなほど、間近な位置に彼の顔がある。

 自分の速い鼓動に、そのときやっと気がついた。

「……あ」

 ぱっと慌てて視線を逸らす。
 たぶん、朝陽くんもほとんど同時にそうしたと思う。

 余計に心音を意識させられた。
 頬が熱を帯び始める。

「…………」

 うつむいた顔を上げられなくなって、逃げ出したいくらい照れくさくなる。
 見つめていたこと、ばれちゃったかな……。

 ふ、と息をこぼすような柔らかい笑い声が降ってきた。
 つい見上げると、はにかむ朝陽くんと目が合う。

「何かさ……懐かしい。この感じ」

 何となく、言いたいことが分かった。
 小学生の頃のくすぐったい気持ちを思い出したのだ。

 あのときもそうだった。
 気になって、気にして、そのくせ気づかれたくなくて。

 ふいに目が合うとこうやって、慌てて逸らした。
 だけど次の瞬間にはまた、瞳の中に彼がいた。

「……ね。わたしも」

 余分な力が抜けて、頬が(ほころ)んでいく。

 あのときの彼は、あのときのわたしと、同じ気持ちだったのだろうか。
 それはさすがに自意識過剰かな、なんて。

 ────ややあって「あ」と我に返った。
 名簿を調べていたのだった。

「これ確かめないと……」

「そうだった」

 クラスの人数は39人。
 番号順に見ていくものの、どの人もちゃんとクラスメートとして知っていた。

 乾夏樹。小日向柚。高月朔。成瀬朝陽。日南花鈴。
 わたしたち5人の名前もあるし、名簿の中に知らない名前が紛れ込んでいる、ということもなかった。

「ちがったのかな。犯人が……知らない誰かが化けて紛れ込んでる、っていうのは」

「数えてみよう」

 1、2、3……上から順に指でなぞりながら、人数を数えていく。
 番号は振ってあるけれど、あてにできなかった。

 ただし、紛れ込むのではなく“成り代わっている”のなら、人数自体は変わっていないはず。

「……37、38、39────40」