そんな朝陽くんの声はやけに響いて聞こえた。
「死……。え? なに言ってんの?」
柚が首を傾げた。
「だって朔の言う通りじゃん。呪い殺すとかそんなことができるならさ、まず自分を殺した奴のこと殺るでしょ」
「じ、じゃあなに? あたしたちの中に幽霊が紛れ込んでるってわけ!?」
実際に白石芳乃に手を下して取り殺された犯人が姿かたちを変えて化け、誰かに成り代わっているのかもしれない。
その“誰か”は乗っ取られているのか、あるいはもともとは存在しない人物が溶け込んでいるのか、分からないけれど。
いずれにしても、朝陽くんが言っているのはそういうことだ。
柚の出した結論は合っている。
「……そうかもな」
意外なことに高月くんはすんなり納得したようだった。
「マジで言ってんの?」
「実際、平凡な高校生でしかない僕たちが、何の情報もない“無”の状態から未解決事件の犯人を突き止めるなんてどだい無理な話だろ」
「ま、まあ、それはそうだけど……」
だんだんと突飛な可能性ではなくなってきたように思う。
犯人を特定する、という行為の意味合いが変わってきた。
わたしたちの中にいつの間にか紛れ込んでいた、偽物の存在を見つけ出す。
それが“裏切り者”の正体。
◇
放課後になると、教室を出る前に教卓へ歩み寄った。
そこに置かれている出席簿を開いてみる。実質クラス名簿だ。
「何してるの?」
声をかけられて顔を上げると、鞄を肩にかけた朝陽くんが立っていた。
ほかの3人の姿は既にない。
「あ、えっと。もし犯人の幽霊が紛れ込んでるなら、これ確かめれば分かったりしないかなって」
「あー、確かに。見てみよう」
どさりと近くに鞄を下ろした彼は、こちらへ近づいてきて隣に並んだ。
ふわっと爽やかな香りが揺れて、どきりとする。
手元の名簿を覗き込むと、思いのほか距離が近くなってどぎまぎしてしまった。



