「ねぇ! ねぇねぇねぇ!」

 朝の教室に明るい声が響いた。

 予鈴が鳴ると同時に入ってきた親友の(ゆず)が、満面の笑みで歩み寄ってくる。

「おはよう。どうしたの?」

「おはよ! 花鈴(かりん)はさ、うちの学校の怪談知ってる?」

 そう言いながら、空いていたわたしの前の席にすとんと腰を下ろした。

「え、怪談?」

「そう! うちの学校にも怖い話があるんだって」

 目をきらきらさせながら言われ、若干気圧(けお)される。

 怖い話はあまり好きじゃないけれど、苦手というほどでもない。
 ここで話の腰を折るのも気が引けた。

 好奇心旺盛(おうせい)な柚はもっぱらそういう話が大好きで、いつもわたしが聞いていようがいまいがお構いなしに披露してくれる。

「どんな?」

 そう聞き返すと、待ってました、と言わんばかりに姿勢を正した。

「日没後、プールの水面に自分の姿を映すと、女子生徒の幽霊が現れるんだって。その幽霊は何でも願いごとをひとつ叶えてくれる」

 柚は人差し指を立てて言った。
 待ってみたけれど、その先に話が続けられる気配はない。

「そこで終わり? 何かあんまり怖くないね」

 てっきり“ただしその代わり……”的な文言が続くと思っていた。
 願いを聞いてくれる代わりに魂を抜かれる、とか。

「だよね、あたしもそう思ってさー」

 なんて柚はスマホを取り出した。
 素早く操作すると画面をこちらに向けてくる。

 何かのサイトのようだった。
 真っ黒な背景に白い文字で、掲示板のようなデザイン。

「何これ?」

「学校裏サイト。この怪談もここで見つけたの」

「裏サイトなんてあったんだ」

 ある種の都市伝説かと思っていたけれど、どうやらうちの学校にも存在していたようだ。

「それで、ほら見てよ」