「あーあ、高梨朔夜つぶせるチャンスだったのになー」
「それなー、まあこの子が楽しませてくれればいいっしょ」
強引な腕と朔夜くんの優しい腕をどうしても比べてしまう。
こっちを気遣って触れてくれた優しい手。
ああ、初めては朔夜くんがよかったなぁ、なんて思っていたとき、
「えー、なにそれ。俺も混ぜてよ」
うしろ、から。
驚くほどに低い声がした。
え、と誰かが言おうとする呼吸音が聞こえたその一瞬、
横の男の子がすごい勢いで吹っ飛んでいく。
バンッ!
鈍い音と壁にたたきつけられた金属音がこの場に響いた。
じわり、とガマンしていた涙が滲んできた。
振り向かなくたって分かる。
ここにいるのは、
「はぁ、なにしてんのほんとに。みほちゃんはバカだねー」
「さ、朔夜くん……」
怖かった気持ちが一気に押し寄せて子供みたいにボロボロ涙がでてきた。
「あーほらほら泣かないで。怖かった怖かった」



