キスしてよ、罠でもいいから



なんだか胸が苦しい……。


「朔夜なら大丈夫だと思うけど、逆にほだされんなよ」


「……んー」


曖昧そうに返事をしたあと、朔夜くんに腕を引っ張られた。


「ほら、いこ」


「……うん、」


そのままエレベーターに入って、前も来たことのある部屋に着く。


相変わらず綺麗なお部屋。
なのに扉を開く音がやけに遠くに聞こえて。


「で、どーしたの。壊れそーになった?」

「、もうやだ……」


警戒心のかけらもないな、と思いながらも朔夜くんの胸に顔を埋める。

優しいようで、きっと冷たい人なんだろうけど胸は意外にもあたたかかった。


いきなりの私の動作にびっくりしたのか朔夜くんが控えめに動いて、それから私の頭に手が乗せられる。
止まったはずの涙が急に出てきて、声を押し殺して泣いてしまう。


「よしよし、辛かったな」


泣いてい喋ることができないわたしを軽く持ち上げてどこかへ連れてい朔夜くん。
ぽす、と優しく落とされた先は真っ白なシーツの上。


つまり、寝室。