キスしてよ、罠でもいいから



「ていうか、なんでみほちゃん保健室(こんなとこ)にいんの?サボリ?」


「そんなことしないもん、体調が悪くて……」


「その割には元気そーですけど」


「う、」


なんて言おうか言葉に詰まった。
悪人でも一応男の子にお腹すきすぎて体調悪くなりました、って言うのは惨めだと思ったし。


「俺はねー、さぼり。体育がダルかったんだよね」



うつむいた私を見て、なんとなく察してくれたのか自分の話題に変えてくれた朔夜くん。
何気なく見つめた横顔の耳には黒のピアスが光ってる。


「ねえ、朔夜くん」


「んー?」


「ピアス、痛くないの?」


そう聞くと、ふいに真っ黒な目に絡め取られた。


なんでかは分からないけど、視線を外せない。



「痛く、ないね。最初は痛かったけどもう慣れた」


「慣れちゃうものなの?」


「そーゆーものなの」



じーっと見つめていると「触ってみる?」と聞かれて興味本位で頷いた。

おそるおそる手を伸ばすと冷たくて硬い質感。