わたしが陽向くんに話そうとしていたことを見透かされている気がした。
陽向くんのことを一瞥して去っていく朔夜くん。
その広い背中はどことなく寂しく見えて。
「ねえ、みほ」
「なに?」
「朔夜と、知り合いなの?」
「知り合いっ、ていうか……」
……言えない、脅されていますなんて。
さっきの朔夜くんの声を思い出すだけで震えてしまいそうになる。
でも自分の嫌う弟と知り合いだなんて陽向くん嫌だろうな。
「すこし、話したことがあるだけだよ」
「ほんと……?」
「……うん、本当」
無理やり笑うと腕が伸びてきてぎゅっと抱きしめられる。
「よかった、でもこれから朔夜とは喋んないで」
「……え、」
抱きしめられたことと、めったに吐かない弱音を吐いている陽向くんに混乱して変な声しか出ない。
あまりにも弱々しく抱きしめてくるものだから、離してとも言えなくて。
ただ、陽向くんが落ち着くまで立っていることしかできなかった。



