キスしてよ、罠でもいいから



『じゃーね、みほちゃん。またね』


『あ、え、どういう……』



頭が混乱しているわたしをよそに、歩き出してしまった陽向くん。


『あ、一応だけど俺、高梨財閥の息子だから』


『え、え!?』


引き止めるまもなく去っていってしまった陽向くん。



『どーゆー、こと』


高梨財閥って言ったらとてつもなく大きい会社。

情報過多すぎてその場に座り込んでしまった私。



そのあとトボトボ帰宅したら、星稜高校からの学費免除の電話が来ていたと母から聞いて腰が抜けるかと思った。



━━━━━━そして、高校一年生の春。


入学してすぐ、わたしは陽向くんを見つけて聞きに行った。


『払わせてしまってすみません、お金は必ず返します』