「あ、思いだした。おごうみほ、だったけ」


お、おぼえられてる!

思い出さなくて絶対よかったのに。



そのタイミングで顔を上げて彼の顔を見てしまった。

無論それは、終わりの合図に等しい。


夜空に溶け込みそうなほど真っ黒な髪に、三日月型に細めている藍色の目。

雪にも劣らない透き通った白い肌。



その全てが、こちらを抑圧してくる。

悪魔だ、と思った。
こんなに美しいけど、こんなにワルい雰囲気を感じさせるなんて。

''ワルい''ものを''美しい''と思ってしまう自分に矛盾を感じるけど、そう思わずにはいられなかった。



「ねー、みほであってる?」


「……てないです、」


「え?」


「あってないです、人違いです。わたし、えっと、えっと……、橋本美波です!」