キスしてよ、罠でもいいから



即答すると面白そうに口角を上げた綺麗な人。


『ねえ、きみ名前なんていうの?』


『小郷、みほです』


『俺は高梨陽向(たかなしひなた)ね。みほちゃんは、この学校に入るの?』



さっきまでとは、明らかに雰囲気が変わったその人、ひなたくん。


『入らないです、隣の高校が志望です』


『なんで?頭良さそうなのに』


『……お金が無いので』


『ふーん』


機嫌がよいように見えたのに、わたしの言葉でなぜかつまんなそうな表情になってしまった。と、思いきや、


『じゃあさ、みほちゃん。お金の心配がないって言ったらこの学園に来てくれる?』


にこ、って笑った陽向くん。


『そりゃあ、まあ……』


偏差値も高いし、教育レベルも高いっていうし……。


私が答えると陽向くんはよりいっそう笑みを深めた。


『じゃあ、これからは進路表の1番上に星稜高校って書いといてね。俺がなんとかしといてあげる』



言い切ってからよいしょ、とひかりくんをおんぶしたひなたくん。