『ねえ、名前はなんていうの?』


『……ひかり、』


『よし、ひかりくん!おにいちゃんを探しに行こうか!』


そう言い手を繋いで、本当の志望校ではない星稜高校の校内を歩き始めた。


『お兄ちゃんはどんな人なの?』


『んーとね、すっごく優しくてお母さんもお父さんもみんなおにいちゃんが大好きだよ。もちろんぼくも!』

『そうなんだ。いいお兄ちゃんなんだね』


『うん!ぼくお兄ちゃん大好き!あ、でも……』


目を輝かせて言ったのに、すぐその輝きをなくしてうつむいてしまったひかりくん。


再び泣きそうになっているのに気づいて私はかがんで目を覗き込んだ。



『ひかりくん……?』


『もう1人のおにいちゃんがね、ぼくは大好きなのにお父さんもお母さんもお兄ちゃんも、みんなみんな嫌いっていうの……。お兄ちゃんがさっきまたお兄ちゃんのわるぐちいってね、それでぼく、さっきお兄ちゃんとケンカちゃって……ひぐっ、』