初めてのキスを捧げたけど、ひなたくんの書類を返してもらえるのならまだ我慢できる。

━━━だというのに、


「んーん、返さないよ」


「……え?」


「だって俺、全部聞いてって言ったじゃん。まだ1個だよ?しかもこれ言ってないからカウント入らないし」


ヘラヘラ笑いながら言ってくる朔夜くん。


し、信じられない……。目が落ちそう……。

ぐっと自然に指に力が入ってしまう。


これからこの人の言うことを聞かないといけない、下僕のような日々が始まるの?

目眩がする気がして目頭を抑えた。


でも、私はこれを断る訳には行かない。

だって私はひなたくんに無能だと判断されてしまったら、困るから。



それを分かっているのか分かっていないのか。
目の前で漆黒の瞳が見えなくなるほど目を細めて笑っている帝王様。

どっちにしろ、私はこの人に従わなければならないみたい。

この人は、きっとやっぱり極悪人。