怒りたいのはこっちなのに、って思いながらキッと下から睨みつける。


なのにそんな私をみた朔夜くんは、怒っていたはずの顔を崩してしまった。


「ほんとにばかだね。怖くもなんともないのに」


「っ、なんで高梨くんはこんなことするの……」


私が生徒副会長だから?
それともばかな女を転がして遊びたいから?


一瞬考える、ような動作をしてから口元を緩めた朔夜くん。
きらり、と耳元のピアスが光った。


「んーん、俺はただ、あいつのものを取りたいだけ」

あいつ、が誰のことかなんて考えなくても分かる。


「だから私は陽向くんのものじゃ、」

ない、という言葉は再び軽いキスによって遮られた。


多分朔夜くんはなにか勘違いしてるんじゃないかな。

だって私とひなたくんの関係は━━━━━、


「うるさい。あいつの名前だすな。それよりみほちゃん、俺と約束したの覚えてる?」


……よく思い返してみたら朔夜くんの『俺のいうこと全部聞いてよ』に私答えちゃった気がする。

つまりその、全部聞いてよがこのキスってこと?


「高梨くん」


「なに?」


「キス、したから書類返してください……」