とん、って暴力にもならない暴力で朔夜くんの胸を殴った。
泣いてるから力が入らないし、力が入っていたとしてもこの人にはノーダメージだろうけど。
この感情の行き場がなかったから。
ぐすぐす泣き続ける私。
「……陽向とはしてるくせに、」
ぼそ、と呟いた朔夜くんの小さすぎる声は私には届かなくて。
しゃっくりをあげながら見上げただけ、なのに。
━━━━ちゅ、
また、唇が触れた。
さっきはひんやりした冷たい感覚だったのに不思議。
今はなぜか熱を持って、熱くなりすぎてる唇。
これ以上してたら目の前の漆黒の瞳に囚われそうで、思わず顔を背けた。
「……生意気、」
顎を軽く掴まれて無理やり朔夜くんの方を向かされる。
身長差があるから、朔夜くんの人差し指にくい、と力が入った。
なぜか陽向くんは、怒ったような表情をしていて。



