それに、この手をとらないと陽向くんの書類を返してもらえないんだよね。
意を決して差し出してきた大きな手を握った、瞬間、
「ばーか」
「え、っ、」
どん、と肩に軽い衝撃。
壁に押し付けられたんだと理解するのに数秒。
「っう、」
さらにわたしの唇に朔夜くんの唇が触れていることに気づくのにまた数秒。
自覚したとともに、唇に触れた冷たすぎる温度がゆっくり離れていった。
脳内で今自分に起きたことをゆっくりとなぞって。
目の前でぺろ、と上唇を舐めた男の顔を見ていると現実だと理解するしかなかった。
なんでこんなことをされたのかという戸惑いと、甘く痺れた唇の感触と、信じてついてきてしまった自分の愚かさで頭がキャパオーバー。
そうなるともう、じわりと涙が滲んでくる。
「……みほちゃん?」
「……っ、高梨くんのばか、」



