キスしてよ、罠でもいいから



内心びくびくしながら歩いていた私の前に現れたのは小学校低学年くらいだろう、小さな男の子。

小学生にしろ、明らかに肉付きの悪く、服も薄汚れているこの子の家庭事情はなにかしらあるんだろうと安易に予想ができた。

……この辺は治安も悪いしね。


知識としてここら辺の治安が悪いことは知っていたけど、その実態を直接見ると胸が痛くなる。


幸せそうににこにこしている男の子を見てこれまた嬉しそうに顔を崩した朔夜くん。


「おー、また家出したりすんなよ」

「うん!もう家出しないけどね、あのね、あのね、」


「もうすぐ俺の誕生日だから、ケ、ケーキを食べてみたくて……」


ダメかな、と言うように期待と不安を滲ませた瞳でこちらを見上げてきた男の子。

顔は真っ赤でよほどケーキが食べたいんだと分かる。


そんな男の子に対してなんの感情も読み取れない横の男。
うう、朔夜くんが買わないって言ったら私が買……