キスしてよ、罠でもいいから




言った瞬間、マズいと思った。

朔夜くんの瞳がすうっと細められたから。
今度はさっきみたいに軽薄な笑いを浮かべて目を細めたんじゃない。

空気が音をたてて凍りつくのが分かった。


目の前の圧倒的な権力者を不快な気持ちにさせてしまったということが痛いほど体に伝わってくる。


この人は尋常じゃなく、陽向くんのことを嫌ってるんだ。



「へぇ、うざ。じゃあさ、返してほしかったら俺のいうこと聞いてよ」


「……え、」


「ねえ、ほら。陽向がガンバッテツクッタもの、俺が破り捨てることだってできちゃうんだよ?」


正直、ほっとした。

さっき消えた朔夜くんの笑顔がまた戻ってきたから。


でもすぐにほっとしている場合じゃないと思い直す。



や、やぶりすてるだなんて絶対ダメだよ。


でもピラピラと封筒を揺らしている朔夜くんは本当にやりかねないし……。



「う、分かった……。いうこと聞きます」


「へぇ、いーこ」