キスしてよ、罠でもいいから



「うん、いーよー」



あっさり、すぎると思った。

闇に生きる、しかも陽向くんを嫌っている人にしては「ウンイーヨー」という軽い返事だなんて甘すぎる、と。


だけど、ただただ陽向くんに申し訳なさがたくさんだったわたしは手を伸ばして企画書を受け取ろうとしてしまった。


「え」


スカッと空を切る手。
それと同時にバランスを崩して暗転する視界。


その勢いで、ドジな私はずっこけてしまったみたい。


とさっ、と硬いコンクリートに転んだにしては優しすぎる音が聞こえた。


「隙が多すぎんね、」


微かな声が耳に響いて、顔を上げるとそこにはドアップの朔夜くんの顔。

わたしを抱きしめる、みたいな体制になりながらも薄く笑ってらっしゃる。


「っ、離してください、ていうかそれ返して……!」


「なんで?こんな封筒が大事なの?」


朔夜くんの言う通り、中身が入っている茶封筒にしか見えないだろう。でも、その中には


「陽向くんが頑張って作っていたものなの。返してほしい、です」