「そういえば、あの作家さんの新作読んだ?」

「もしかして、水樹先生のこと?」

「ああ、そうそう。恋愛小説だったよね、珍しく」

「うん!普段はミステリー小説が多いから意外だったけど、すごく引き込まれた!面白かった!」

「ふふっ、わかる。僕も面白いと思ったよ」


まさか水樹先生のことを知っているだなんて思わなかったけれど、友達とはしない会話ができて嬉しかった。


「あ。これ、読んで見てくれない?水樹先生のデビュー前の本」

「えっ?で、デビュー前の本なんてあるの?」

「特別にもらったんだ。絶対真面目ちゃんに読んでもらいたくて」

「す、すごい……!!ありがとう、大切に読ませてもらうね!」


分厚い本を受け取る。

その時、少し如月くんと手が触れてしまった。


つい、ドキッとしてしまった。

だから、彼の顔を見てみた。だけど、相変わらずのポーカーフェイス。

さっき笑ってくれたのは、とってもレアだったのかもしれない。


そうだよね、私みたいな女の子に興味ないもん普通。