アンリの衝撃的な打ち明け話を聞いてから一週間が経過した。

あの日以来、エリーヌはアンリとは顔を合わせていない。というよりはむしろ、彼を避けていると言ったほうが正しいだろう。
アンリは勉強の隙を突き、頻繁に部屋を訪ねてくるが、エリーヌは体調が優れないと理由をつけてアガットに断ってもらっていた。

頭ではリオネルを好きだと認識しているのに、エリーヌの中に眠るミュリエルの魂が、マティアスの魂を持つアンリを焦がれて騒ぎだしたらどうしようという不安を拭いきれないせいである。

リオネルに特別変わったところは見られないが、なにかを言いたそうにエリーヌを見ているときが時折あった。

以前のエリーヌならどうしたのかと問いかけただろうが、今はできずにいる。もしもリオネルにも前世の記憶があり、それが本当にノーマンドのものだと確定したら……。エリーヌはリオネルを好きなのに、ふたりの関係性が変わりそうで怖いのだ。

揺れ動く気持ちが投影されるせいか、夢に頻繁にミュリエルが現れる。昨夜はマティアスと出会った夜会の場面だった。


「エリーヌ様、魔石研究所のダリル侯爵殿下より文が届きました」