「…う〜ん。ま、いいか。とりあえず見つかってよかったし」

若干の違和感を覚えつつも、私は気にせず部屋のカーテンを開けた。

窓の外から差し込んでくる朝の光が眩しい。

ん。良い天気!絶好の入学式日和だなぁ。

そんなことを考えつつ、鼻歌まじりに自分の部屋を出た私は、1階の洗面所に顔を洗いに向かう。

台所ではお母さんが、朝ご飯の準備をしているみたいで良い匂いが鼻をくすぐった。

カチャ。

洗面所にやってきた私が、おもむろに目の前にある洗面台の鏡を見た瞬間。

え…?

ピタリと体が硬直する。

…は!?どういうこと…?

私が驚くのも無理はない。
だって、そこに映っていたのは…。

「中学1年生の頃の…私?」

髪の長さは、肩のあたりで切りそろえられたボブヘア。
まだ若干、あどけなさの残る顔立ちには見覚えがあった。

ゆ、夢…?
でも、こんなリアルな夢ある…??

思考が追いつかなくて、呆然と立ち尽くす私の背後から。

「おい。蘭、邪魔なんだけど…。オレも洗面台使いたいからどいてくれる?」

と、声をかけてきた人物を見て私はギョッとする。

「あ、明(あきら)お兄ちゃん!?なんで、ここに…。てか、その格好、コスプレ!?何で今さら高校の制服なんか着てるの!?」

そこに立っていたのは、眠そうにあくびをする5歳年上の兄、明だった。

去年から大学生になった兄の明は、すでにひとり暮らしを初めていて。大学やらバイトやらで忙しいのか最近では、めったに家に帰ってこなかったのに…。