「人だかりが見えますね。どなたか有名な方がいらっしゃるのですか?」
宝飾品店を出ると、人だかりが見えた。

「この国で上位の有名人の僕はここにいます。もしかしたら他国から来た国賓かもしれませんね。もうすぐ、建国祭だから招待客が既に来られていてもおかしくありません」
エドワード王子は私の手を握りしめると、人だかりの方に近づいていく。

「あの、護衛の方が戸惑ってますが大丈夫でしょうか?人混みの中に悪漢がいたら、エドワード王子殿下に危険が及んでしまいます。私が盾に慣れれば良いのですが、体が小さくて盾になれるかが不安です」

「イザベラ様、面白い方ですね。あなたを盾にするような男に見えますか? 僕も戦えますし、あの人混みの中にもしっかり王族の護衛騎士が潜んでますよ」
エドワード王子が声を出して笑うので、私も思わず微笑み返す。

「今年、ルイ国で立太子したサイラス・ルイ王太子殿下です。ご挨拶に行きましょう」
人混みの真ん中には、銀髪に青い瞳をした美しい青年が立っていた。

太陽の光を浴びて彼の銀髪がキラキラ光っている。
見惚れるほど美しいその姿に一瞬、時が止まった気がした。

青い礼服に銀色のルイ国の王家の紋章の刺繍が入っている。
横に私と同じ年くらいの銀髪のドレス姿の少女がいるのが見えた。

「エドワード王子殿下は彼が好きなのですか? 隣にいるのは妹さんでしょうか?」

「サイラス・ルイ王太子殿下は僕の憧れです。隣にいるのはレイラ・ルイ王女でしょうね」
エドワード王子殿下が嬉しそうに、私の手を引き人混みの真ん中まで連れていく。
王族であるエドワード王子の登場に人々が道をあける。

「サイラス・ルイ王太子殿下、お久しぶりです。立太子おめでとうございます」
優雅に挨拶をしたエドワード王子に習い私もあいさつをした。

「サイラス・ルイ王太子殿下、レイラ・ルイ王女殿下にイザベラ・ライトがお目にかかります」

近くで見たサイラス・ルイ王太子殿下は眩しいほど美しく、私とは相容れない光の住人だと思った。

「エドワード王子殿下、お久しぶりです。それから、初めましてイザベラ様。ルブリス王子殿下とのご婚約おめでとうございます」
サイラス王太子殿下の澄んだ声に心が温かくなる。

「ありがとうございます」
私はルブリス王子殿下との婚約のことを思い出し、一気に気持ちが暗くなり下を向いてしまった。

「エドワード王子殿下、宜しければ、この後ご一緒にランチでもしませんか?」
少し震えた可愛らしい声が聞こえて顔をあげる。

レイラ王女が頬を染めて、エドワード王子殿下を見つめていた。
恋愛に全く縁がない私でも分かった。
彼女はエドワード王子殿下が好きなのだ。