「これと、これと、こちらもください」
宝飾品店に入り、エドワード王子殿下がひたすらに買い物している。

彼がとても楽しそうに商品を選ぶので、私も幸せな気分になる。

「エドワード王子殿下、王妃様にプレゼントするのですか?」

「可愛らしい黄金の瞳をしたイザベラ・ライト公爵令嬢にプレゼントしようと思って商品を選んでいたのですよ」
彼が笑顔で金色にルビーがあしらってある髪留めを私の髪に留めてきた。

「滅相もございません。このような高価なものは頂けません。私にはプレゼントを貰う理由がございません。私はてっきり王妃様へのプレゼントかと思ってました。受け取りのお断りが遅れて申し訳ございませんでした」

今まで、ほのぼのした気持ちでのんびり彼の買い物を見ていたことが悔やまれる。
ネックレス、イヤリング、髪留めと女性用のものを選んでいるので、もうすぐお誕生日の王妃様へのプレゼントかと勘違いしていた。

「母上は次期国王になる予定の兄上にしか興味がありませんよ。彼女に何かプレゼントするなんて考えたこともありません。ライ国の王位は長子相続だから、2年遅く生まれただけで僕は王位につけないのです」

「エドワード王子殿下の存在が一番のプレゼントですよね。確かに、あえてプレゼントを用意する必要はないかもしれません。エドワード王子殿下は王位につきたいのですか? 誰かのために何かをしたいと言う考えをお持ちなのですね。尊敬致します」

私はいじめで追い詰められて、不登校になり弟と家で過ごしていた。
母の誕生日にも外に買い物に行く勇気がなくてプレゼントを用意できなかった。
そのことを謝る私に母は私と弟の存在が、1番のプレゼントだと言ってくれたのを思い出したのだ。

「僕は王族なのに国王になれないから、むくれていただけです。兄上より努力しても彼の臣下になる運命しかないのをを呪っています。イザベラ様は心が綺麗なんですね。どうして、あなたは兄上の婚約者なんでしょうか⋯⋯」

彼が私をエスコートするように手を差し出してきた。
私は心が綺麗だなんて言われたことがなく、緊張して来てしまった。
震える手を彼の手の上にのせると、彼は微笑んだ。