アカデミーに到着して、待ってましたとばかりに私を迎えて来たのはフローラだった。
「綾、久しぶりね。また、会えるのを楽しみにしてたわ。今、私とルブリス王子殿下はラブラブなの。いつだって私が主役でごめんなさいね。でも、キモいあんたには悪役令嬢がお似合いよ」

私が最終学年でライ国にあるアカデミーにくるなり接触してきた、白川愛が憑依したフローラの言葉に震えがとまらなくなる。
何か言い返そうと思っても、吐き気が襲ってきて邪魔をする。
周りの人間が遠巻きで私を見ていて、悪口を言っているのかと思うと怖くて仕方がない。

「ルブリス王子があんたのこと物言わぬ人形だと言ってたわ。その通りね、人形というか汚物だけど」
そう言い残して去っていった、フローラの後ろ姿を見つめることしかできない。

結局、私は何も変わっていないのかもしれない。
ルイ王国では、サイラス様をはじめララア、ライアン王子、レイラ王女にも守られてきた。

でも1人では結局、絶望のまま死んだ綾のように無力なのかもしれない。
私は聞こえてくる周りの声が全て自分を悪く言っている声のように感じて耳を塞いだ。