ルイ国に人質としてやってきて、1年が経とうとしていた。

私は王宮で用意された食べ物ならば、吐き気を感じずに食べられるようになった。

「サイラス様、お疲れ様です」
私はいつものように厨房を借りて、彼に軽食を作って彼の執務室に届けた。
今日はトマトサンドイッチとハムサンドだ。

サイラス様は忙しくて食事をとる暇もないと聞き、厨房を借りてお弁当を作り届けたのがはじまりだ。
今では、お昼くらいになると仕事をしながら私の作った軽食を彼と一緒に私も食べている。

「まだ、サイラスと呼び捨てにはしてくれないのですね。それにしても、よく食べてくれているようで安心しました」
イザベラは元々痩せ型だが、食事を食べられない私が憑依したものだから栄養失調状態でガリガリになっていた。

サイラス様は私が食事を食べることに苦労していることに、いち早く気がついていた。
忙しい時間の合間を縫っては私の元に、お菓子などをちょくちょく持ってきて私を太らせる作戦をとっているように見えた。

「流石に女性に体型のことを指摘するのは、失礼だと思いますよ」
彼があまりに私の体をみている気がして、恥ずかしくなり注意してみた。

「怒ったイザベラを初めて見ました。これからも、どんどん感情を出してくださいね」
相変わらず素敵な微笑みで返してくる彼にときめいてしまう。